電気設備設計の実務入門|照明・配線・受変電の基礎知識を解説
- design H
- 24 時間前
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更新日:4 時間前

■ 照明計画の考え方と照度の基準
照明計画は、空間の用途に応じて「どのくらいの明るさが必要か」「どんな照明器具を使うか」を決める重要なプロセスです。
照度(明るさ)の基準を理解しよう
照明の明るさは「lx(ルクス)」で表され、用途ごとに推奨照度がJISで定まっています。 例:
住宅リビング → 150~300 lx
事務所 → 500 lx
病院の手術室 → 1,000 lx 以上
▶ 参考:JIS Z 9110 照明基準総覧
配置の考え方と器具の種類
直下照明(スポット的)と間接照明(拡散的)を使い分け
反射率の高い壁・天井を使えば照明器具数を抑えられる
LED器具は長寿命・省エネ・熱が出にくいという利点がある
照明器具選定には、カタログに記載された配光曲線や照度分布図をチェックし、適切な配置と光の広がりを計画する必要があります。
■ コンセント・スイッチの配置と回路分け
住宅でもオフィスでも「どこに」「いくつ」コンセントを設けるかは快適性に直結します。
コンセント配置の基本ルール
一般家庭なら6畳に2~3か所以上(壁1面ごとが目安)
水回り・屋外・エアコン専用など用途別に分けて考える
OAフロアや天井配線を活用することで、レイアウト変更に柔軟対応可能
スイッチ計画のポイント
片切り/3路/4路スイッチを使い分けて、階段や長廊下などでもON/OFFできる設計
明るさセンサーや人感センサー連動も省エネ設計に有効
図面上ではスイッチと対応照明を「S」記号+実線」で結ぶのが一般的
回路の分け方と注意点
同一回路に負荷集中しないよう用途ごとに回路分離(照明回路、コンセント回路など)
ブレーカー1つあたりの許容電流(例:15A、20A)を超えないよう計算
エアコン・IHクッキングヒーター・エコキュートなどは専用回路が必要
■ 受変電設備とは?高圧受電と低圧配電の基礎
電気設備設計の中でも、建物の「心臓部」ともいえるのが受変電設備です。
高圧受電とは
建物規模が大きい場合、電力会社から6.6kVなどの高圧電力を受け取って、構内で100V/200Vに変圧して使用します(高圧受電)。
その際使われるのがキュービクル式受変電設備(高圧機器をコンパクトに収めた箱)です。 メリットは基本料金が安くなることですが、初期費用や保安管理義務が増すため、工場・病院・学校・商業施設などが対象です。
低圧受電との違い
一般家庭や小規模テナントは、電力会社から単相3線式(100/200V)または三相3線式(200V)の低圧で受電します。
低圧受電はコストが抑えられ、保安管理者も不要です。ただし契約電力は原則50kW未満に制限されます。
■ 負荷計算と分電盤設計の流れ
電気設備の心臓部=分電盤の設計は、正確な負荷計算から始まります。
負荷計算のステップ
機器一覧を作成(照明器具・空調機・厨房機器など)
各機器の定格容量(W/kW)を記載
同時使用率(例:照明90%、動力60%)を掛ける
合計して「必要受電容量(kVA)」を算出
この計算によって、受変電設備の容量や、主幹ブレーカーのサイズ、幹線の太さを決めていきます。
分電盤の設計ポイント
主幹ブレーカーの定格は、総負荷容量に余裕を見て設定
分岐回路(15A、20Aなど)ごとに照明・コンセントをグループ分け
ブレーカーには漏電遮断器(ELB)を適切に選定
将来の増設を見越して予備回路を残す設計も有効
▶ 設計時には選択協調(保護機器同士の連携)にも配慮し、上位側のブレーカーが過敏に動作しないよう調整するのが理想です。
■ 建物用途別の設計ポイント(住宅・オフィス・商業施設など)
電気設備設計は、建物の用途によって設計の優先順位や難易度が変わります。
住宅の場合(戸建て・集合住宅)
設計のポイントは快適性・安全性・将来性
専用回路(エアコン、IH、エコキュート)、太陽光発電・EVコンセント等への対応も増加
美観・バリアフリーの観点で配線ルートも工夫が必要
オフィスビルの場合
重要なのはレイアウト変更への対応力(可変性)
床下配線・OAフロア・フリーアクセスの採用が多い
高照度・照明制御・通信設備・セキュリティシステムとの統合も重要
商業施設・店舗の場合
見た目の美しさと電力供給の安定性がポイント
サイン照明や空調機器の分電設計、照度・演色性の設計に細かい対応が求められる
テナント入替に対応する個別回路管理の導入も検討対象
■ まとめ|実務の基本を押さえて信頼される設計者へ
電気設備設計は、建物の使いやすさや安全性を左右する「縁の下の力持ち」です。本記事で紹介した照明・配線・受変電・負荷計算・建物用途別の考え方は、まさにその基礎中の基礎。初心者の方は、まずは図面の読み方・照度の基準・回路分けの考え方から習得し、徐々に高圧受電や負荷計算、盤設計へとステップアップしていくのがおすすめです。
最初は難しく感じても、ひとつずつ理解すれば必ず「使える技術」になります。経験と知識を積み重ねて、現場で信頼される設計者を目指していきましょう。

建築設計は、単に建物を建てるだけでなく、人々の暮らしや未来を創造する重要なプロセスです。アッシュデザインは、お客様の理想を形にするために、豊富な経験と確かな技術でサポートいたします。ぜひ弊社のサービスページをご覧いただき、お気軽にご相談ください。