電気設備設計の委託費用と発注のポイント【外注検討者向けガイド】
- design H
- 23 時間前
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■ 電気設備設計を外注するメリット・デメリット
電気設備設計の外注は、専門性の高い設計を効率よく実現する方法として有効ですが、一方でリスクもあります。
外注するメリット
専門性の確保:受変電・避雷・省エネ計算など高度な設計にも対応可能
社内リソースの最適化:繁忙期や小規模事務所でも業務を回せる
品質・スピードの安定:経験豊富な設計者による図面の正確性
外注するデメリット
設計意図の共有が不十分だとミスが出やすい
設計変更時の柔軟性に欠ける場合がある
外注先の品質にばらつきがある(特に価格だけで選ぶと要注意)
結論: 外注は「信頼できる相手」と「明確な業務範囲の設定」が成功のカギです。
■ 設計委託費用の相場と算定根拠
電気設備設計の外注費用は、建物の用途・規模・工事金額・設計範囲により大きく異なります。ここでは、国土交通省の公共施設設計ガイドラインや積算基準をもとに、信頼性の高い費用目安とその根拠をご紹介します。
公共施設における設計費の算定根拠
国土交通省では、公共施設の設計を委託する際に「工事費に対して設計費が何%か」という考え方を用いています。
以下の資料が根拠になります。
公共建築工事積算基準(設計業務編)
設計業務委託等技術者単価表
建築設計標準業務量ガイドライン(建築研究所)
これらに基づき、電気設備設計業務の委託費は、工事費の約3~7%程度が目安です。
▶ 参考資料:
算定方法の例(工事費比例方式)
建物規模・用途 | 電気工事費の想定 | 設計委託料(目安) |
小規模公共施設(例:小学校の新築) | 約1億円 | 300万〜700万円(3〜7%) |
中規模庁舎 | 約3億円 | 600万〜1,500万円 |
大規模病院や庁舎 | 約10億円以上 | 1,500万〜3,000万円以上 |
※機械(空調・給排水)と合わせた「建築設備設計費」の一部として委託するケースも多く、設計業務の分担比率を明確にして契約します。
民間建築物における委託費用の考え方
民間の設計委託では、公共案件のような明文化された基準はありませんが、実務上は以下の方法で費用が決められます。
① 工事費比例方式
設備工事費の3〜5%(中規模ビル、集合住宅など)
設備設計と建築設計を分離発注する際によく使われます。
② 工数ベースの積算方式
技術者単価(例:設計技術者:時給5,500円〜8,000円)×作業時間
設計業務委託等技術者単価表を参考に積算
③ 成果物単位での固定報酬
「照明・配線図一式で●万円」「負荷計算+盤図作成で●万円」など
小規模事務所や戸建住宅での外注時に多い
戸建住宅や小規模案件の相場(実務ベース)
住宅や小型テナントなどの案件では、以下のような価格帯が参考になります。
用途・規模 | 相場感(税別) | 業務範囲 |
戸建住宅(30〜50坪) | 15万〜50万円 | 照明・コンセント・配線計画+分電盤図など |
住宅リノベーション | 10万〜30万円 | 図面修正、改修対応 |
店舗・事務所(小規模) | 20万〜80万円 | 空調・照明・防災含む電気一式 |
※性能や法令対応(ZEB、BIM、照度シミュレーションなど)の有無で価格は上下します。
設計費は「安さ」で選ばず「内容・範囲」で判断すること
電気設備設計の費用は、建築設計よりも見えにくい部分が多く、「見積りが一式だけ」で提示されるケースもあります。しかし、業務範囲(図面の種類・打合せ回数・申請対応の有無など)を確認せずに発注すると、後から追加費用が発生するリスクもあるため注意が必要です。
設計委託は「見積金額」よりも、業務内容と品質・対応力で選ぶことがポイントです。
■ 見積書の読み方と業務範囲の確認方法
設計の見積書は、一見すると専門用語ばかりでわかりにくいものもありますが、以下のポイントを押さえると判断しやすくなります。
見積書で確認すべき5つの項目
業務範囲が明確か?
→「基本設計」「実施設計」「申請図面」「監理対応」など区別されているか。
図面枚数・種類の内訳 →「照明平面図×2枚」「系統図×1枚」など、成果物が具体的に記載されているか。
設計対応フェーズ →打合せ回数、設計修正の回数上限は?確認申請への対応は含まれるか?
成果物の納品形式 →PDF/CAD/BIMなどの指定はあるか。Revit形式希望なども要チェック。
追加費用の発生条件 →「設計変更が●回を超えた場合」など、追加請求の基準が明記されているか。
■ 良い設計者を見極めるチェックポイント
電気設備設計の委託で失敗しないためには、「価格」ではなく「信頼できる実務力」が重要です。
チェックリスト例(初回ヒアリング時)
□ 過去の実績(用途・規模が近いプロジェクト経験があるか)
□ 図面のサンプルを提示してもらえるか
□ 法令・省エネ・防災設備などへの対応力を説明できるか
□ 納期・対応範囲を明文化してくれるか
□ コミュニケーションが丁寧か・返答が早いか
「提案力がある」「専門的な質問にも即答できる」「打合せ内容を図面に落とせる」などの点は、良い設計者の共通点です。
■ 契約前に確認しておきたい注意点
委託契約前には、口約束で進めず、条件を必ず文書化しておきましょう。トラブル回避のためには、契約書または発注書の中に次のような項目を盛り込むと安心です。
設計委託契約で押さえるべき6つの項目
契約範囲(業務内容の詳細)
成果物の納期・フォーマット(例:CAD、PDF)
設計変更への対応可否・条件
支払い条件(支払い時期・分割の有無)
再委託・下請けの有無(再委託禁止条項を入れるか)
著作権・使用権の取り扱い(特にBIMデータ)
また、業務完了後に「瑕疵対応期間(例:1ヶ月間の無償修正)」を設けておくと、設計ミスが見つかった際も安心です。
■ まとめ|設計委託の成否は「業務範囲の明確化」と「人選」がカギ
電気設備設計を外注することは、専門性を補完しつつ、社内リソースを有効活用できる有効な手段です。ただし、「安さ」だけで選ぶとトラブルや品質低下を招くリスクも。業務内容・成果物・費用・納期・追加条件などを明確にし、信頼できるパートナーと契約することが何よりも重要です。
また、初回の見積時点で「どこまで対応してくれるか」を細かく確認し、長期的に付き合える設計者かどうかを見極める姿勢が成功の第一歩です。

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