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建築設備設計の課題と解決策|人手不足・長時間労働をどう乗り越えるか

  • 執筆者の写真: design H
    design H
  • 4月14日
  • 読了時間: 5分

更新日:3 日前


建築設備設計の課題と解決策|人手不足・長時間労働をどう乗り越えるか
建築設備設計は、空調・電気・給排水など建物の機能を支える非常に重要な仕事です。しかし現在、設備設計業界は深刻な人手不足と長時間労働に直面しています。こうした課題は、若手人材の定着率やプロジェクトの品質維持にも大きく影響しています。本記事では、設備設計における現状の問題点と、それを解決するための実践的な取り組みについて解説します。
 
 



設備設計業界の現状と人手不足の背景

設備設計業界では、高齢化と若手不足の二重苦が進んでいます。2024年の厚生労働省データでは、設備設計技術者のうち約35%が55歳以上であり、一方で29歳以下は10%未満にとどまっています(厚労省・技術者年齢構成統計より)。これは「設計業務が難しくて地味」「長時間労働が前提」といったイメージが原因です。


また、設計者の多能工化が進んでいないため、1人で図面、計算、打ち合わせまで対応しなければならず、仕事量も過多になりがちです。こうした背景が若手離れを加速させています。






長時間労働の原因と改善策

長時間労働の主な原因は「業務の属人化」「アナログ作業」「設計変更への対応負担」です。たとえば、ある技術者しか使えないExcelテンプレートで作業していたり、設備図面と計算書が別々のフォーマットで管理されていて連携が取れていないなど、作業の非効率さが労働時間を延ばしています。

また、顧客や建築側からの急な設計変更への対応も、時間外作業の大きな要因です。これに対しては、情報共有の早期化と仕様確定のプロセス整備が有効です。たとえばGoogleドキュメントやチャットツールを活用し、リアルタイムで設計変更を共有する仕組みを導入することで、手戻りを防げます。

長時間労働の原因と改善策





業務効率化を実現するツールと方法

設計業務の効率化には、BIMやクラウドツールに加えてAIの活用が注目されています。以下に、設備設計におけるAI導入の具体例と効果を含めたツール・方法をご紹介します。


BIM(Building Information Modeling)の導入

BIMを活用することで、建築・構造・設備が同一モデル上で設計可能になり、干渉確認や設計変更の手戻りを大幅に削減できます。たとえば、RevitやArchicadは空調・給排水の配管ルートや機器配置を3Dで可視化し、構造部材との衝突を自動検出します。



クラウド型プロジェクト管理ツールの活用

Asana、Notion、Backlogなどを用いて、タスクの進捗状況や期日を見える化することで、属人化の回避やチーム内の負荷調整が可能になります。特にフルリモート勤務の場合、こうした可視化ツールは必須です。



業務標準化(テンプレート化)とRPA導入

設計図書や積算表のテンプレートをあらかじめ整備することで、作業の繰り返しを減らし、品質も安定します。また、ルーティン業務(ファイル名変更、PDF一括変換など)はRPAツール(Power AutomateやUiPath)を使って自動化できます。


AIによる設備設計支援の活用

AIは、これまで手作業だった空調負荷計算や設備機器の最適配置を自動で行えるようになっています。たとえば、AIを搭載した設備設計支援ソフトでは、建物の用途・面積・方角などの条件を入力するだけで、自動的に最適な空調方式や給排水ルートを提案してくれる機能があります。

さらに、過去の設計データと類似案件を学習し、「このような建物なら、こういう設計が多い」というパターンを示してくれるAIも登場しています。これにより、設計初期の検討スピードが格段に上がります。たとえば、海外では「PillarPlus」や「TestFit」といったAI設計プラットフォームが建築・設備設計の初期案を1日以内に生成する事例もあります。


効果例:

  • 設計初期案の検討時間を 従来の1/10以下に短縮

  • 新人設計者でも 高度な初期検討が可能に

  • 繰り返し業務をAIに任せることで、熟練設計者が「判断が必要な部分」に集中できる



今後は、日本国内でもこうしたAI支援ツールが広まり、「AIが補助→人が判断」というスタイルが標準になると予想されます。






人材育成とチーム運営のポイント

若手人材の育成には、「属人的な教育」ではなく、「体系的・共有型の育成モデル」が求められます。


OJT+ナレッジ共有のハイブリッド型教育

たとえば、実務を通じたOJTに加えて、設計ノウハウをGoogleドキュメントや社内Wikiで共有しておくと、学びの再現性が高まります。また、録画マニュアルや動画でのノウハウ蓄積も有効です。



ペア設計・レビュー文化の導入

若手と中堅、あるいは設備×構造など、異なる視点を持つ設計者同士で「ペア設計」を行うことで、スキルの相互学習が可能になります。レビューの場を定期的に設けることも重要です。



心理的安全性のあるチーム作り

「質問しづらい」「失敗を責められる」という空気は、若手の離職リスクを高めます。チャットでの声かけや、週1の1on1ミーティングを導入することで、設計チームに安心感を生み出せます。

人材育成とチーム運営のポイント





まとめ|人手不足時代の設計力は「効率+共育+AI活用」がカギ

建築設備設計業界が抱える「人手不足」「長時間労働」といった課題は、もはや個人の努力だけで乗り越えられるものではありません。しかし、BIM・クラウド・RPAに加え、AIの導入が加速すれば、チーム全体の設計生産性を大きく高めることが可能です。

AIは、若手でも一定の品質を担保した設計案を作れる環境を提供し、熟練者には判断や調整に集中できる時間を生み出します。さらに、属人化の解消やノウハウ継承にもつながるため、人材育成・組織力強化にも大きな効果をもたらします。

設計業務の質とスピードを両立させるには、「設計力」だけでなく、「選択力」と「仕組み化力」も重要な時代になってきました。AIを味方に、次世代の働き方へ一歩踏み出していけるように弊社も積極的に取り組んでいきたいです。



 

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