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建築設備設計で押さえておきたいツール・ソフトウェア紹介

  • 執筆者の写真: design H
    design H
  • 2 日前
  • 読了時間: 8分

更新日:13 時間前


建築設備設計で押さえておきたいツール・ソフトウェア紹介
建築設備設計は、空調・電気・給排水など多岐にわたる設備を安全かつ効率的に配置・制御する業務です。そのため、従来の紙図面だけでなく、設計作業を支援する多様なソフトウェアの活用が不可欠になっています。近年は2Dから3Dへの移行や、クラウド連携、AIによる負荷計算なども進んでおり、ツールの使い分けが設計効率や品質に大きく影響します。本記事では、設備設計でよく使われるソフトをジャンル別に紹介し、初心者にもわかりやすく特徴と選び方を解説します。
 
 



2D・3D設計に使われる主なソフト

設備設計のベースとなるのが図面作成用ソフトです。ここでは、国内外でよく使われている2D CADと3D/BIM対応ソフトを紹介します。


AutoCAD・Revit・Tfas・CADEWAなど


AutoCAD(オートキャド)

AutoCADはAutodesk社製の2D CADソフトで、建築・設備・構造の分野を問わず世界中で使われています。日本の多くの設計事務所やゼネコンでも採用されており、平面図・系統図・断面図の基本操作はこれで習得可能です。



Revit(レビット)

同じくAutodesk社が提供するBIM(Building Information Modeling)対応の3D設計ソフト。設計と同時に数量計算・干渉チェックができるため、複雑な配管・配線の視覚化や意匠設計との調整に強いのが特徴です。



Tfas(ティーファス)

CADWe'll Tfasはダイテック社が提供する、空調・衛生・電気設備に特化した2D/3D設計ツール。建築設備設計士向けに最適化されており、配管モデリングや自動ルート作成など現場で実務的な機能が充実しています。



CADEWA(キャデワ)

富士通のCADEWAは、建築設備設計とBIMを融合させた国産3D CADです。建築・設備モデル間の整合チェックや、図面と数量・属性の連動が可能で、大手ゼネコンや設計事務所でも導入されています。




計算・シミュレーション系ツール

設計においては、設備機器の容量・性能・配置を決定するための計算やシミュレーションも欠かせません。手計算では時間がかかる作業を効率化できるツールを紹介します。


空調・照明・電気負荷計算ツール

EnergyPlus

米国エネルギー省が提供する無料の建築エネルギーシミュレーションソフト。日射、風通し、断熱性能、機器効率などを踏まえた詳細な空調・照明・換気の熱負荷計算が可能です。高精度ですが操作はやや上級者向け。



統合Webプログラム(国交省)

日本の建築物省エネ法に準拠した一次エネルギー消費量の計算ツール。主に確認申請・適判対応で使われ、換気量・給湯負荷・照明負荷などを基準BEIで数値化できます。



Qpex(キューペックス)

一般社団法人 新木造住宅技術研究協議会(新住協)が開発した住宅向け熱負荷計算ソフト。壁材や窓の断熱性能、日射条件を細かく入力することで、暖冷房負荷を算出し、最適な空調機器容量を設定できます。 参考:https://shinjukyo.gr.jp/tech/qpex/



DIALux

ドイツ発の無料照度シミュレーションツール。照明器具を指定し、部屋の形状・反射率・設置高さに応じた照度分布を視覚的に確認できます。照明設計の初学者にもおすすめ。





クラウド型BIM・連携ソリューション

クラウドを活用したソフトは、複数人でのリアルタイム編集・設計共有・BIM連携などを実現し、働き方の柔軟化にも貢献します。設備設計でも注目のサービスを紹介します。


BIM360(現Autodesk Docs)

Autodesk社が提供するクラウドBIMプラットフォームで、RevitやAutoCADと連携し、図面・モデル・チェックリストをすべてクラウドで管理できます。設計者、施工者、発注者間の情報共有がシームレスになります。



GLOOBE(グローブ)

福井コンピュータが提供する日本の建築基準に対応したBIMソフト。意匠・構造・設備の情報連携がしやすく、確認申請書類の出力にも対応。クラウド連携で複数拠点からのアクセスも可能。



Rebro(レブロ)+RebroCloud

NYKシステムズが提供するRebroは、空調・衛生・電気に特化した建築設備専用3D CADです。RebroCloudを組み合わせることで、遠隔からの干渉チェックや設計データの共同編集が可能になります。





ツール選定のポイントと導入提案

設備設計のツールは種類が多く、すべてを導入するのは現実的ではありません。まずは業務内容・規模・社内体制に応じて、“自社に合ったツール”を無理なく導入することが成功の第一歩です。以下に、よくある課題別に「こうしたら良いのでは?」という実践的な提案を紹介します。


導入のポイント

  • 図面作成中心か?BIM対応か?  →2D中心ならAutoCADやTfas、BIM化を見据えるならRevitやCADEWA

  • 公共案件が多いか?民間案件が多いか?  →公共物件なら省エネ計算・法令対応ツールとの連携が必須

  • 社内人数・スキルレベル  →中小規模なら操作が簡単で導入しやすいTfasやRebroが現実的


導入目的

推奨ツール例

備考

2D図面を効率よく描きたい

AutoCAD / Tfas

多人数対応可

設備の干渉チェックをしたい

Revit / Rebro

BIM運用の第一歩として◎

法令・省エネ計算に対応したい

統合Webプログラム / QPEX

ZEH・適判対応向け

照明の照度分布を確認したい

DIALux

提案力UPに効果的

チームでリアルタイムに作業したい

BIM360 / RebroCloud

テレワーク・複数名設計に便利

外注先とスムーズにデータ連携したい

GLOOBE / Revit(IFC)

国交省系BIM案件にも対応可

建物のエネルギー消費を詳細にシミュレーションしたい

EnergyPlus

高精度な負荷計算・年間エネルギー分析が可能。大型・公共施設に向いている




図面作成を効率化したいなら「AutoCAD+Tfas」の2段階導入

  • 【課題】 2D図面を1から手描きしており、修正や複写に時間がかかる。


  • 【提案】 まずAutoCADで汎用的な図面作成スキルを社内に浸透させ、その後Tfasで設備専用モデリング機能(ダクトの自動配置、配管断面自動表示など)を導入。


  • 【ポイント】 AutoCADは多くのスタッフが使えるようになりやすく、Tfasで設備図の作成が効率化。段階導入で初期コストや教育負担を抑えられます。



省エネ法対応に備えるなら「統合Webプログラム+外皮計算ツール」

  • 【課題】 2025年からの省エネ基準適合義務化に向けた準備ができていない。


  • 【提案】 まずは国交省の「統合Webプログラム(BEI計算)」を操作できる体制を整えるとともに、外皮性能を計算できるExcelテンプレートや簡易ソフト(例:Webプロ「外皮性能計算支援ツール」など)を導入。


  • 【ポイント】 法令対応は設計品質だけでなく、確認申請の通過にも関わる重要事項。導入負担が少ないツールから始めて、徐々に制度対応力を高めましょう。



社内で設計レビューや共同作業をしたいなら「Rebro+RebroCloud」

  • 【課題】 複数名で設計したいが、図面のバージョン管理やチェックに時間がかかる。


  • 【提案】 Rebroを中心に3D設計し、RebroCloudでチーム共有。チェックリスト・モデルの比較もクラウド上で行えるようにする。


  • 【ポイント】 紙図面やメールでのやりとりをなくすことで、設計ミスや伝達ミスを減らし、「設計の見える化」と「トラブル防止」につながります。



初めてのBIM導入には「Revitでの干渉チェック用途から」スタート

  • 【課題】 BIMに興味はあるが、いきなりフル活用するのは不安。


  • 【提案】 まずは「干渉チェック専用」と割り切ってRevitを導入。意匠・構造設計者との連携用に設備モデルをつくり、立体的な設備配置確認に活用。


  • 【ポイント】 設計精度の向上+ミス防止に最も直結する工程から始めれば、導入効果を実感しやすく、社内の理解も得やすいです。



中小設計事務所には「AutoCAD+DIALux」の組み合わせが手堅い

  • 【課題】 初期投資を抑えつつ、最低限の図面作成と照明計算は行いたい。


  • 【提案】 AutoCAD LTなど廉価版で図面作成、DIALux(無料)で照明計算・照度分布確認を行う。


  • 【ポイント】 コストを抑えつつも、顧客に対して「見えるデータ」で照明計画の提案ができ、信頼性と設計品質が両立します。



選定に迷ったら「目的と操作性」を軸にする

  • 目的 省エネ対応?BIM連携?確認申請?負荷計算?

  • 操作性 社内スタッフが扱いやすいか?教育体制はあるか?

  • サポート マニュアル・講習会・電話相談の有無も重要です。



このように、導入ツールは「いきなり完璧を目指さず、段階的に」「自社の課題にフィットするものから」がポイントです。ツールはあくまで設計力を支える手段。無理のない導入で業務効率と品質を両立しましょう。





まとめ|目的に合ったツール選びが設計品質を左右する

設備設計は、人の目に見えにくい分、「安全性・快適性・省エネ性」を裏で支える非常に重要な業務です。そして、その質は使用するツールと設計プロセスの整備に大きく左右されます。2D・3D設計、熱負荷計算、BIM、クラウド連携など、ソフトの特性を理解し、目的や予算に応じて最適なものを選ぶことで、設計の正確性・スピード・チーム連携が格段に向上します。まずは、自社や自身の課題を整理したうえで、無理なく導入できるものから取り入れていくことが成功のポイントです。



 

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